こんにちは!かーやです。
今回は、川村元気さんの『百花』について紹介していきます。
現代社会で、問題視される機会が増えてきた「認知症」「介護」などの社会問題に焦点を当てつつ、主人公の成長する姿を描いた本作は、多くの読者が共感し、考えさせられる作品になっています。
川村元気さんの『百花』をまだ読んでいない方にとって、参考になれば嬉しいです。
目次
こんな方におすすめ!
- 介護系の仕事に興味がある方
- 親子について考えたい方
- 社会問題について考えたい方
- 親になることについて考えたい方
1分で分かる!『百花』あらすじ
母子家庭で育った泉は、レコード会社に勤務し、「同僚」であり「妻」である香織と暮らしていた。妻の妊娠が分かり、泉は「父親になること」について考えていた。
実家からそれほど離れていない場所に暮らしていたが、実家に帰る頻度はそう多くはなかった。いつものように、母が待つ実家に足を運ぶが、母の姿がない。
講演のブランコに座る母ん姿を見て安堵するが、どこかいつもとは異なる母の雰囲気を感じ取った。いつもと異なる雰囲気に気付かないふりをしていつも通りに振る舞う泉。
そんな中、母に告げられたのは「アルツハイマー」だった。受け入れがたい現実に悩む泉であったが、徐々に母の病状を受け入れていく。
そんな中、母が書いた1冊の「日記」を見つける。そこには、泉が今で知りたかった空白の1年の詳細が記載されていた・・・。
過去の母を、日記を通して想起しながら、現実の母に寄り添っていく泉。母に寄り添いながらも、父になることを徐々に自覚していく泉の成長姿を描きながらも、「親」「親子」について考えさせられる1冊です。
小説だけど、どこか現実味を感じる内容に、読者を惹き込むこと間違いなしの内容です!
『百花』見どころ紹介!
社会問題について学ぶことができる
『百花』のストーリーを通して、「母子家庭」「認知症」などの社会問題について考えることができます。
テレビや本では目にする社会問題が、実際に自分の身に降りかかった時、それは逆に現実味がなくなってしまうのかもしれません。
「詳しく検査をしてみなければわかりませんが、おそらくアルツハイマー型だと思われます。ほかにもレビー小体型、脳血管性などいくつかタイプがあるのですが、
認知症全体の半分以上が、アルツハイマーです」
アルツハイマーという言葉が母と繋がらない。
まるで遠い、寓話の世界にはびこる病のように、現実感なく聞こえた。引用:『百花』川村元気
主人公の泉も、いざ自分の母親が医者に「アルツハイマー」と診断されると、受け入れたくない気持ちと葛藤します。
しっかりしていて、バリバリ仕事も行い、いつも元気に振る舞っていた母親の姿を見てきていたからこそ、受け入れ難い気持ちが大きいのかなと思います。
私自身も、いざ自分の両親が・・・と思うと、その瞬間はきっと色んな感情と葛藤する気がします。
”百合子がいて、泉がいる”それが親子にとってのバランスだった。
母が失われていくということを、受け入れることができない。引用:『百花』川村元気
突然足音を立てずに降りかかってくる病には、誰しもが受け入れがたい感情を持つと思います。
病気はもちろんのこと、災害もそうかもしれません。
人それぞれ、「当たり前」の基準は異なると思いますが、「当たり前」の日常を過ごすことができている時点で幸せなんだと思わされます。
きっと、あの頃から症状が出ていたのだろう。
母は何も言わなかったが、確かに助けを求めていた。
それなのに見過ごしていた。
もう少し早く気づいてあげられたら、進行を遅らせることができたかもしれない。引用:『百花』川村元気
いつだって、後悔は後にやってきます。
この瞬間の泉に対しては、共感を抱く読者もきっと多いと思います。
泉の葛藤する気持ちや、視点から、「社会問題」について考えさせられる瞬間が散りばめられています。
きっと、日本国民の多くが泉に共感し、何かしら考えさせられる瞬間があるはずです。
「親になること」について考えさせられる
あと五ヶ月で、子どもが生まれる。
人間はそうやって、押し出されていく。引用:『百花』川村元気
この「押し出されていく」という表現が絶妙じゃないですか??
「親になる」でも「成長する」でもなく「押し出されていく」。
泉視点での語られてはいますが、「親になる心構えが整う瞬間を待つことなく、人は親になり、祖父母になっていく」そんな意味合いを感じる表現です。
「俺……父親になれるのかな?」
ずっと心の奥にしまっていた言葉が口を衝いた。
記憶の初めから今に至るまで、泉に父親はいなかった。
憧れたり頼ったり、恐れたり憎んだりする相手がいなかった。
その欠落を母とふたりで埋めてきた。
ではいったい父とは何か?
得体のしれないそれに、今自分がなろうとしている。引用:『百花』川村元気
母子家庭で育った泉だからこその葛藤ももちろんあると思います。
しかし、「父親になること」「母親になること」は、誰しもが経験したことのない未知の世界に足を踏み入れる感覚に近いかもしれません。
知らない世界・経験したことのない世界だからこそ、「不安」な気持ちがあることは間違いないです。
しかし、親になる全ての人が、この「不安」を乗り越えて「親」になります。
『百花』を通して、泉の姿を通して、「親になること」について考えさせられる1冊です。
推理小説のような感覚が味わえる
母の1冊の日記を通して、空白の1年の記録を辿る瞬間は、どこか「推理小説」のような感覚を与えてくれます。
知らない母の「想い」や「経験」を、日記の記録を通して知る。
「会話形式」ではなく「日記」というところに、様々な「推測」や「憶測」を巡らせることができます。
泉と共に、母の記録を辿る部分は一挙に読みたくなること間違いなしです!
まとめ
いかがだったでしょうか?
今回は、川村元気さんの『百花』について紹介いたしました。
『百花』は、主人公の泉を通して、「親子」「親」「アルツハイマー」「母子家庭」など様々なことについて考えさせられる1冊になっています。
深刻な問題だけれども、読み終わった後はなぜかすっきりする感覚を味わえます。
これからの読書生活の1冊に、『百花』いかがでしょうか?
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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